小諸 布引便り Luckyの日記

信州の大自然に囲まれて、老犬介護が終わり、再び、様々な分野で社会戯評する。

サントリー美術館「毛利家の至宝」展を覗く

サントリー美術館「毛利家の至宝」展を覗く
六本木の旧防衛庁跡地に、建設された東京ミッドタウンの中に、移転したサントリー美術館で、開催されている「毛利家の至宝」展を覗いてみることにした。この土地は、長州藩の毛利家麻布下屋敷のあった場所でもあり、まんざら、毛利家に、縁が無いわけでは無い。元々、毛利博物館に所蔵されている所蔵品を、東京で、公開すると謂うことで、毛利家という大名文化の精粋に触れられるというものである。戦後まだ、間もない頃、小林秀雄は、わざわざ、東京から、夜行列車を乗り継いで、山口県防府にある毛利博物館に、所蔵されている雪舟の「山水長巻」を見に行き、大いなる感動とともに、そこに立ち尽くしたと記している。その16メートルにも及ぶ大作の国宝、四季山水図の水墨画や、毛利家門外不出の所蔵品の数々を、その戦国武将の甲冑・自画像・刀剣、その典籍・絵画、婚礼調度品と雛飾り、ゆかりの生活道具類(小面・着物・茶の道具、等)2フロアーに分かれて、129点が、陳列・解説されている。教科書にも出てくる毛利元就の自画像、直垂、刀剣類、軍配、軍扇、三子教訓状、等…、雪舟の水墨画もさることながら、明を離れるときに、雪舟を送別する「雪舟送別詩」も、なかなか、宜しい。貴族が、文学や雅の伝統を、創出したとすれば、それらを、武家が、その後、作品として継承・保護し、豪商が、更に、文化として、拡めるという歴史が、この展示会にも、看て取れる。山水画の模写も、古今和歌集の巻八や、那智の滝の西行物語絵巻も、元就詠草連歌や隆元による「枇杷に鷹図」の絵画も、自らが、文化の担い手、庇護者として、君臨し、歴史の中で、連綿として、継承してくればこそ、こうして、今日、我々の眼にも、触れさせて貰っているものである。その「美意識」は、悉く、細かな品にも、次郎左衛門雛飾りや有職雛人形や、香合わせ、碁盤等の日常の生活用品・道具や、戦さの鎧、刀剣、印籠の装飾の細々としたところまで、随所に、眼を凝らせば、当時の人々のこうした日常の何気ない「美意識」が、改めて、感じ取られる。自分は、茶道を嗜まないが、茶道に関する道具類、茶釜、茶せん、井戸茶碗、高麗茶碗、食籠、軸盆、等、竹製に朱塗りの漆の硯箱も、実に、そのデザインと装飾の美しさには、感動する。又、面や着物類も、暗い室内に、照明によって、浮き立ち、思わず、足を止めてしまう。名前自体が、織り方やデザインの解説表記になっていることを改めて、再認識する。重要文化財の「紅萌忽地山道菊桐文様片身替唐織」等、一文字一文字、読みながら、作品のデザインと色柄、織り柄を、見較べながら、鑑賞すると、又、更に、愉しいのではないだろうか?成程、実に、うまく、名前をつけたものである。最期に、麻布邸からの当時の遠望図を眺めながら、今日の景色を想像すると、庭園の一部の緑の芝生も、何とはなしに、考え深いものがある。それにしても、東京山の手の田舎っぺ夫婦には、久しぶりの都会の東京ミッド・タウンの雰囲気は、一寸、眩しすぎたようである。昼食に食べた名古屋コーチンの親子丼が、美味しかったのだが、、、、、、。5月27日まで、開催だそうである。