小諸 布引便り Luckyの日記

信州の大自然に囲まれて、老犬介護が終わり、再び、様々な分野で社会戯評する。

酒屋の廃業の貼り紙に思う

 

偶然、我が老犬の散歩道の途中で、坂上屋という明治以来、百十数年に及ぶ歴史を有した酒屋さんが、廃業する旨の貼り紙を、見つけた。私が、未だ、小学校に、上がる前の昭和29年頃、この酒屋さんでは、アイス・キャンディーやら、かき氷、或いは、銀色の丸形の台に、同じく、平べったいスプーンとバニラ・ウェハースを、その脇に、添えた、当時にしては、まだ、珍しかったアイスクリームを、祖母に、連れられて、食べに行くのが、楽しみだった。氷の文字が白地に、赤く染められた旗が、懸かって、夏の暑い日差しを遮るように、大きな簾も立てかけられていて、一時の清涼を愉しむ、子供にとっては、至福の空間であった。まだ、当時は、一升瓶で、醤油や、味噌・塩、ビールなどを御用聞きで、配達して貰っていた時代だから、専売権を有する酒屋は、それなりに、地域密着で、保護されていたのであろう。今や、先買権も、酒の小売り免許も自由化され、近場のスーパー、コンビニでも、競合商品が、より安い価格で、販売されていて、さすがに、百数十年という歴史だけでは、到底、太刀打ち出来なかったのであろうことは、想像に難くない。自社ビルを兼ねたマンションを建てているので、生活には、きっと、困らないのであろうが、何とも、時代の趨勢とは、こういうことを意味しているのであろうかと、少々、寂しい思いになる。行きつけだった床屋の廃業といい、小さい頃の風景が、段々、消え去ってゆくのは、淋しい限りである。後には、どんな店が、テナントとして、入るのであろうか?昔の風景が、ふと、瞼の裏に、蘇ってくる。