小諸 布引便り Luckyの日記

信州の大自然に囲まれて、老犬介護が終わり、再び、様々な分野で社会戯評する。

金木犀の香りに想う:

金木犀の香りに想う:

今年も又、金木犀の花の少し甘いかすかな香りが、外を歩くと漂ってくる。エメラルド・グリーンの瞳で、いつも、アイ・コンタクトを外すことなく、ジッと私を凝視していた君、耳もシェパードの血が混じっていたのか、ピンと直立して、おまけに、嗅覚も鋭い君は、いつしか、その老いと共に、美しい瞳も白内障で、濁ってしまい、足腰の弱ってきた君は、フラフラしながらも、晩年でも、良く一緒に、散歩したものである。ある時、電柱に、頭がぶつかると、君は、鼻面を空中に高く突きあげて、何やら、クンクンと、突然、嗅ぎ廻ったものである。どうしたのかと、壁際に、眼をやると、そこには、大きな金木犀の樹が、黄金色に輝く小さな花々を樹全体に咲かせていて、どうやら、その花が、甘い香りを漂わせ始めていたことに、初めて、私は、気が付いたものである。毎年、この頃になると、決まって、このほのかに甘いかすかな香りが漂い初めると、私は、そのことを懐かしく、その香りと共に、君を想い出します。君が、18歳と4ヶ月の命を全うして、逝ってしまってから、もう2年半が、経とうとしています。両親の介護は、女房殿に任せっきりであった私にとっては、君の介護は、色々と、老いてゆくことと命の最期の在り方を、教えて貰いました。口のきけない君という老犬に、人生の終末を学ばせて貰いました。金木犀の香りが漂い始めると、いつも、君のことを想い出します。そして、又、モミジが紅葉する頃が、訪れると、大好きだったおばあちゃんが着ていたベルベットで、女房殿が再利用して作ったマントを着て、真っ赤な紅葉の下で、撮った写真を想い出します。もう眼の見えなくなった君は、「ラッキー!」と声をかけると、カメラの方をしっかりと向いてくれました。金木犀の香りが漂い始め、モミジの葉が、まもなく、色づき始めると、君を想って、瞼の裏に、うっすらと、熱いものが、いつも、こみ上げてきます。